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新薬ひとつに1000億円!? : アメリカ医薬品研究開発の裏側 この本の全体像を、一言で紹介するのは難しい。それは、ここには、膨大な事実が示されているからである。 これからは、一つの医薬品が世に出るには、1000億もかかるのではないか、というのがこの本のタイトルの由来であるが、今、医薬品業界では新薬の開発を巡って、世界的なレベルで、ものすごい競争がある。そのための基盤的な研究に政府はどのくらいの支援をすればいいのか、基礎研究とは何か。また、それを医薬品につなげるには、どんなシステムや,構想が必要なのか。これからの医薬品開発はどうなっていくのか。 こうした問題に、過去の大型医薬品の開発の歴史をたどりつつ、この戦争に関わってきた、企業、研究者を実名で示しながら、詳細なレポートがなされている。医薬品開発の難しさ、企業の戦略、研究者の個性、先見の明、あくどさ、魅力なども含めて、理解することができる。また、この戦争には、政府の政策なども関わっており、読めば読むほど、中身の濃さには圧倒される。 特に、エイズの特効薬、あるいは、ガンの治療薬についてのレポートは圧巻である。 薬というものに、興味を持つ学生諸君は一度読んでみるといい。ただし、かなりのボリュームがあることは覚悟することが必要である。 学長 磯貝 彰 ※ 書評中の身分・表現は当時のものです。 |