XLVI
食の終焉 : グローバル経済がもたらしたもうひとつの危機 帯には、Nature誌に、「食システムの破綻はもはや不可避:人類への警鐘を鳴らす一冊」と紹介されたとある。また、ニューヨーク・タイム誌やタイム誌にも紹介されたとある。それを見て、さらに、訳者の解説を見て、買った本である。 いま、世界の食経済はどうなっているのか。本書によれば、かつては 巨大食品会社が中心であったのが、いまや、巨大流通会社が世界の食糧生産を牛耳っているという。しかし、いまの先進国が肉中心という食習慣を維持し、途上国がそれを追い求めれば、早晩、世界の食糧生産は破綻してくる。それは、エネルギーの問題であり、水の問題であり、また、環境変化の問題でもある。しかし、こうした状況をもたらし、最終的に食経済を支配しているのは、われわれ消費者の動向なのであるという。 食の問題は、他の工業製品と違って、無くてもなんとかなるという話ではなく、どうなっても一定量は必要であるという点で、きわめて特異的である。その意味で、食経済の破綻は、食品の「経済学的な価値」と「生物学的な価値」の間のずれに起因しているという。それでは、今後どうすればいいのだろうか。遺伝子組換えとそれに対比されるオーガニック農業のどちらも解決策にはならないという。解決の方向へのシナリオは?、そして、それは間にあうのだろうか。 恐ろしい本ではあるが、いずれ近いうちにこうした状況が迫ってくることは予想できる。THE END OF FOOD とはそれを象徴したタイトルなのであろう。 綿密な取材に基づいて書かれた、優れた本である。食に関わる科学を学ぶものは一度は読んでおくべき本であると思い、紹介しておく。 学長 磯貝 彰 ※ 書評中の身分・表現は当時のものです。 |