XXVIII
すべてはどのように終わるのか : あなたの死から宇宙の最後まで

クリス・インスピー著, 小野木明恵訳


 驚くべき本である。何かの始まりについて書いた本は多い。また、人についていえば、死について書いた本も多い。しかし、この本は、人の死から宇宙の死までを、死(終わり)について系統的に書いている。こんな本を書ける人がいるのだ。
 
 人(個人)は死んでも、生物の再生産性から、人類は少なくともしばらくは生きる。しかし、やがて人類も死んでいく。他の動物も種としては生き残っていっても、地球の死によって、やがてその命はなくなるだろう。それでは、地球のような惑星は宇宙の中にあるのか。人のような知性体は、宇宙に存在するのか、あるいはこれから生まれてくるのだろうか。
 太陽もいずれ死んでいき、銀河も、宇宙も死んでいく。星や、宇宙は、再生産されるのだろうか、それとも、一過性なのだろうか。今の宇宙は、ビックバン以来137億年だという。今後1兆年は存在するようだ。宇宙はuniverse なのか、multiverse なのか。
 たかだか100年程度の人の命と、1兆年という宇宙の命。それらがもしどちらも一過性だとしたら、それ故に、それぞれいとおしい。

 それにしても、人という知性体は、こんな果てしもないことも想定した研究を行っている。恐るべき物だ。ただ、人類が死滅して、観測者が絶えたとき、それでも宇宙は存在するのだろうか。ただあるのではなく、誰かが見ているから存在するのだとすれば、観測者が再び現れるまで、宇宙は、存在しない状態になるのかもしれない。

 本書の発行は早川書房である。この出版社は、SF物などを多く出してきたものとして、私の記憶にある。本書はSFではないが、遠い未来を見通す科学ノンフィクションの本ではある。
 原題は How It Ends. -From You to the Universe-

学長 磯貝 彰

※ 書評中の身分・表現は当時のものです。