XLVIII
収奪の星 : 天然資源と貧困削減の経済学 ある大学の生協書籍部で、刺激的なタイトルにつられ、手に取ってみた本である。イントロをざっと見て、これは読まねばと思い買ってきた。 著者は経済学者で世界の「最底辺の10億人の国々の人々」の救済に努力してきた人である。その立場でさらに自然の重要性に気がつき、環境保護者と経済学者の主張を両立させようと、この本を書いた。 ここでは、天然資源の活用(特に、天然資源が豊かな低貧国においての)は、持続可能な社会に向けて、どのような問題があり、どのような解決法があるかについて提案している。 天然資源の活用は、空間軸と時間軸(地域と世代)から見て不平等性が出ることが問題であることも指摘している。また、アフリカなどでは、政府のガバナンス(汚職問題など)も、現実的には多くの問題があることを示している。 いずれにしても、天然資源をどう使うか、またどう後世に残すか、経済学者の立場での議論は勉強になる。今でも飢えている10億人の人々、また、今後増えていく人口のための食糧確保は、これからのわれわれの責任でもあることを痛感させられる。その意味で、何処かの国もプリンスを代表とするような環境保護団体が主張する遺伝子組換え作物の禁止という主張への痛烈な批判は、私の立場からすれば、気持ちのいいものである。 これまで、いろいろな本を紹介してきたが、これでおしまいとするつもりである。学生諸君にとって何かの参考になったとすれば、幸いである。 皆さんこれからも、いい本をたくさん読んでください。 学長 磯貝 彰 ※ 書評中の身分・表現は当時のものです。 |