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科学者心得帳: 科学者の三つの責任とは 私は、新入学生への講義「「科学技術論・科学技術社論」の中で、この3年間最初の講義として、「科学する心、科学者への道」と題した話をしている。そのなかでは本学の置かれた立場、研究とは、科学の作法、学問のすすめなどの話をしながら、科学者の責任として、本書を取り上げて話をしている。これまでは手元に置いておいておいた本ではあるが、講義を聴いて本を読んでみたいと思う学生がいるかもしれないので、そろそろ、図書館に出しておこうと思う。 本書で著者は、研究上の自由を許されている科学者として、その対応として持たなければいけない責任として、倫理責任、説明責任、社会的責任の三つを採り上げ、それらについて述べている。そして、その基本は、科学者としての倫理観であるとする。倫理は法律ではない、従って、これを破っても日常社会の中で、法的に罰せられるものではない。しかしながら、科学者の世界がそれを構成する人々の倫理観で成り立っている以上、倫理を踏み外せば、科学者の世界にいることは出来ないという罰を受けることになる。そうした具体例も含めて、科学者の責任についてわかりやすく語っている。さらに本書では、科学が科学のための科学から、社会のための科学という視点も含めて考えざるを得なくなってきた過程になどについてもふれられている。そしてこれからの科学者として、社会とともに生きる科学者像を示している。 著者は、これからの若い科学者に読んで欲しいといって、この本を書いたという。だからこそ私もその内容を、新入学生に伝えているのではある。 新入生だけでなく、学生諸君に必読の書としてあげておく。 学長 磯貝 彰 ※ 書評中の身分・表現は当時のものです。 |