Abstract:
脊椎動物の肺は枝分かれ状の構造をしているが、この構造を形成するメカニズムはまだよくわかっていない。発生学的には、胎児の消化管の腹側から上皮の袋状の原基が生成され、その後、上皮と間葉の相互作用によって枝分かれ構造を作ると言われている。この発生現象に関わる多くの遺伝子が同定されつつあるが、それらがどのようにして枝分かれ構造を作るのかは、発生遺伝学の手法のみでは解明が難しい。我々は肺の上皮の枝分かれ形成の最も単純な実験系を確立し、さらにその数理モデルを作る事によって枝分かれ構造の生成のメカニズムを解明しようとしている。この過程でわかったことと、現在直面している問題点について概観する。