XXXIII
学ぶとはどういうことか

佐々木毅著


 4月13日の修士課程の最初の講義で、福澤諭吉の「学問のすゝめ」から、いくつかの話をしたが、本書は、この「学問のすゝめ」と同著者の「文明論之概略」を基礎に、学ぶことの意味、目的、方法等について、丁寧に述べている。本書は、3.11以降に書かれたものであって、当然、大震災というものを「学ぶ」という点からどうとらえるかについても書かれている。
 特に「学び」の4段階として、「知る」「理解する」「疑う」「超える」として、単にいわゆる勉強をして知ればいいということでは、学んだことにはならないことを、具体的に示している点は興味深い。私が講義の中で、「知る」ということについて話したことをはるかに超えた説明がされており、私自身が目を開かれた。また、何を学ぶのかについても、著者は政治学者であることがから、政治の問題や文系のことが多い中、科学や文明の問題についても記述されている。さらには、学べることと学べないこと、例えば心構え(心の工夫)のようなもののあることについても、興味深い論が成されている。
 著者は、スペシャリストと、プロフェッショナルを区別し、前者を専門家、後者を天職といっている。専門家が「専門バカ」と陰口を叩かれ、スペシャリストでしかない状況から脱出し、「考える専門家」すなわち、プロフェッショナルになるには、何を「学ぶ」必要があるかということ、また、「学ぶ」ということを通じて、「疑う」や「超える」という段階になることが必要だとしている。
 さらには、こうした「学び」は継続していかなければいけないといっている。大学院で新たな「学び」の段階に入った学生諸君に是非読んで欲しい本の一つである。

学長 磯貝 彰

※ 書評中の身分・表現は当時のものです。